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世界中の本好きのために

いしたにまさき

Profile

1971年大阪府生まれ。成城大学文芸学部文化史学科卒業。 Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』運営。2002年メディア芸術祭特別賞、第5回WebクリエーションアウォードWeb人ユニット賞受賞。内閣広報室・IT広報アドバイザーも務める。ひらくPCバッグなどカバンデザインも手がける。 著書に『あたらしい書斎』(インプレスジャパン)、『ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である』(技術評論社)など。 『できるポケット Evernote 基本&活用ワザ 完全ガイド』(インプレス)等のガイド本や、『ツイッター 140文字が世界を変える』(毎日コミュニケーションズ)をはじめ共著も多数。

Book Information

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領域を超えた学びで得られたもの


――思慮深い性格を感じます。


いしたにまさき氏: そのまま自分の内面ばかりに向き合っていては、真の答えは得られないと思い、その後は自分の人格改造を意図的にやってきました(笑)。僕が通っていたのは埼玉の川越高校というところで、「ウォーターボーイズ」の舞台になった学校でした。あの男子シンクロをはじめたのは、友人なんですよ(笑)。

そこで僕は放送部をやっていました。僕は楽器を演奏するわけでもないし、自分が喋りたいわけでもない。映画を撮りたいわけでもないけど、音は好き。それで消去法で、放送部が自分には合っているのかなと思ったのです。大学時代もずっと放送部にいましたね。これは自分の最初のキャリアにも強く影響しています。はじめての仕事は音響のエンジニアで、ラジオの仕事などをやっていました。基本的に僕は、自分で何かをやるタイプの人間ではないのだと思います。何かをやりたいという人を助けるなど、サポートをして、プロジェクトを作っていくというような形が僕には向いているのでしょうね。

――文芸学部へ進まれたのは。


いしたにまさき氏: これも大塚英志さんの『子供流離譚』という本を読んだ事が大きなきっかけとなりました。そこで民俗学に興味を持ち、子どもの時から好きだったのは歴史や考古学とはまた違う世界に面白さを感じたのです。僕が進んだ文化史学科というところは、歴史と民族と民俗の三つをやれるところでした。成城大学はちょっと不思議なところで、文芸学部で学芸員の資格が取れるんです。僕も持っています。アート系の講義や英米文学に国学部、ヨーロッパ文化など、全部受けられました。僕は、一つのことにフォーカスできない人なので、うってつけでしたね。

あとで一番役に立ったのは、贈与論を学んだ事です。ブログが広まり始めた頃、どうも一般的な消費社会でいう尺度とは違うものが動いていると感じていました。ソーシャルメディアもそうですね。それを読み解く鍵になったのが贈与論でした。最近は評価系、評価経済などと言ったりしますが「なんだ、これ贈与じゃん」と、すぐに繋がりました。そんな感じで、大学時代は色んな本を読みあさりましたね。

リンクしていく読書


――(壁一面の書棚を見て)いしたにさんの思考体系に深く影響を及ぼした本がこちらにずらりとあります。


いしたにまさき氏: どこになんの本があるかは、なんとなくはわかっています(笑)。上の方にある本は、自分の中で評価が決まっているので、あまり出し入れはしません。この本棚を作ってくれた大工さんから「20年はいけるよ」と言われていたのですが、引っ越した初日に、書棚は全部埋まってしまいました(笑)。それでも、一時よりはだいぶ整理されました。以前は廊下も埋まっていたのです。

――今も書棚からはみ出て、至るところに本があります(笑)。


いしたにまさき氏: さきほどの大学時代に読んだ本はこの、トマス・ピンチョンの『V.』です。浪人時代にも読んでいましたが、結局、大学を卒業するまで読み終わりませんでした。世界観を理解してしまうと楽なのですが、そこまでのハードルが結構高いんです。Vという女を追いかけていく話なのですが、その中にメスのネズミなども入ってくるんですよ。それに、1章単位で時代が錯綜するので、今読んでいる時代がわからなくなることもあります。それほどストーリーがあるわけでもないのですが、「僕は読まなきゃいけないな」とどこかで思っていました。『V.』をやっと面白いと思うきっかけとなったのは、『V.』の中でも一番面白い話である、モンダウゲンの物語、からです。

ピンチョンの話はおそらく、テクノロジーとは何かという話。そのテーマが顕著に出ているのは『重力の虹』ですね。でも僕は『重力の虹』を、まだ読み終わっていません。主人公には他人の夢を見る能力があるという話で、日常風景から突然、夢の話に入っていくから、「えっ、僕は今、何を読んでいたんだっけ?」という感じになるのです。

人は何をしてきたのかというところで見ると、諸説ありますが、「20世紀最大の発明は、実は株式会社だった」という『株式会社』という本があって面白いですね。それから、ここ何年かで一番感銘を受けたのは、『コンテナ物語』。実は僕らの世界はコンテナでできていたという本で、色々な人が紹介されていますが、ホントに素晴らしいですよね。

――『あたらしい書斎』にも書かれていましたが、本をジャンル分けしているのですね。


いしたにまさき氏: 執筆している時に横に置いていたのは、司馬遼太郎の本です。立花隆さんと利根川先生の対談本『精神と物質』も素晴らしいですね。親父が遺伝子系を専門にしていたこともあり、僕もそういったライフサイエンスというものに興味があります。その中でも、免疫という考え方は面白いなと思いました。おそらくネットを読み解くには免疫と贈与がセットで必要なので、環境とテクノロジーをセットにして考えないとなかなかむずかしいのです。それから、すごく尊敬しているのは猪瀬直樹さん。猪瀬さんの『ミカドの肖像』という本からは、すごい安心感を頂きました。結論に至ることではなく、プロセスの中身が大事なんだよという猪瀬さんの考え方にはすごく共感します。

――(私も本棚を覗き込みながら…)。これは何ですか。


いしたにまさき氏: 文学系では、一種パロディー本に近い本ですが、ドナルド・バーセルミの『雪白姫』は大事ですね。あと、僕が大好きなのは、大江健三郎さんの『M/Tと森のフシギの物語』です。どうにも収まりきらない、おかしな人たちというジャンルで言うと、最高峰は猪木寛至さんですね。猪木さんの自伝は日本人なら読んでおいてほしいです。それから、山田風太郎の『人間臨終図巻』これも良かったですね。それと、オクタビオ・パスの『マルセル・デュシャン論』と、現役では最高の画家であるゲルハルト・リヒターという人の『ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論』です。また、さっきの『V.』のピンチョンの中でも、今のところ最高傑作と言われている『メイスン&ディクスン』も挙げたいところです。アメリカの真ん中ぐらいにある、真っ直ぐの州境の線をメイスン&ディクソン線と言うのですが、それを測量した男2人を主人公にした本です。

――マンガもちらほら、見えています。


いしたにまさき氏: そうですね。マンガだと、現役の作家の中では黒田硫黄さんの『大日本天狗党絵詞』が最高です。それから『わたしは真悟』もすごく大事。これはロボット、テクノロジーの話です。あと、やっぱり『火の鳥』ですね。

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