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井上寿一

Profile

1956年、東京都生まれ。 一橋大学社会学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、同博士課程単位取得退学。法学博士。一橋大学法学部助手、学習院大学法学部教授等を経て、現在に至る。専門は近現代日本政治外交史。 著書『危機のなかの協調外交』(山川出版社)で第25回吉田茂賞を受賞した。 そのほか、近著に『第一次世界大戦と日本』『戦前昭和の国家構想』(講談社)、『理想だらけの戦時下日本』(筑摩書房)、『政友会と民政党 - 戦前の二大政党制に何を学ぶか』(中央公論新社)などがある。

Book Information

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自由闊達な雰囲気の中で


――大学生のような自由を、一足先に謳歌しているように感じます。


井上寿一氏: 色々なことをやっていましたね。文芸部のようなサークルで、小説も書いていました。『学生公論』という雑誌の編集もしていたのですが、原稿が予定通り集まらず「お前何か書いていいよ」と言われ、思いつきで適当に小説を書いていました。ジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」という絵があるのですが、その中に自分が入って行くという話です。自分にとって何か哲学的なことを投影するというか、ある種のティーンエイジャーの青春の孤独のような感じを書こうとしたのだと思います。

――のちに社会学部に進む片鱗がうかがえます。


井上寿一氏: 小説も人の心を扱いますが、1人の人間の内面だけではなくて、社会とのつながりの中で人間を考えるという方向に興味があったのかもしれません。社会心理学を学びました。
もうお亡くなりになっていますが、細谷千博先生という法学部で国際関係論をやっていた方が恩師です。一橋大学は規模の小さい大学なので、他の学部の授業も簡単に受けられましたし、他学部の科目を1つは受講しないと卒業できませんでした。社会学部の人間だと、商・経・法から最低1科目です。僕は商学部の銀行論など、それぞれとりました。中でも細谷千博先生の日本外交史と国際関係論はなかなか性に合って、法学部のゼミにも混ぜてもらえて面白かったですね。

――そのまま院に進もうと思われたのですか。


井上寿一氏: 当初は、大学院に行く気があまりありませんでした。他の学生と同じように、普通に会社訪問をしていました。銀行に訪問した際、卒論の話になり夢中で語っているうちに、「君、大学院に行ったほうがいいんじゃないの」と言われました。そういう「お断り」を真に受けて「そうかも知れない」と大学院へ進むことを決めました(笑)。

ただ大学院へ進んでからも、まだ将来の道は明確に決めていませんでした。修士課程のとき、中国の渤海で石油を掘る会社で、日中石油開発という半官半民の会社から、「来ないか」と直接求人がきたのです。渤海の石油採掘ステーションを1つ任される仕事でしたが、自分には向かないと消去法で博士課程に進みました。

将来の手がかりとしての歴史書


――その成果は最初、学位論文を公刊した著書『危機のなかの協調外交』として出版されました。


井上寿一氏: 学位論文のままだと内輪の人間にしか読まれないので、なんらかの形で公にしたいと思っていました。おかげさまで賞も頂き、初めて社会に認知されたと感じました。この本のタイトルは編集者が考えてくれたものですが、全体の内容をピタリと言い当てているものでした。

「ここは足りないのでは」、「ここは削った方がいい」、「ここはもう少し分かりやすい言葉で」、といったアドバイスを受けながら書いたのですが、そういう編集者のアドバイスがなければ、本というのはできないと思います。大学のテキストである『日本外交史講義』(岩波書店)という本も、編集者と一緒に作りました。

基本、大学で使用される教科書というのは全然面白くないと不評ですが、アメリカの大学で使われる経済学の教科書は、事例が面白くベストセラーになっています。『日本外交史講義』もそうした想いのもと、編集者とのやり取りの中で作られていきました。

――どんな想いで書かれていますか。


井上寿一氏: 私は基本的に歴史書を書きますが、どういう風に読まれるのかを考えて書いてます。過去とのつながりの中で自分の存在を確認しつつ、将来どうしたらいいのか。そういう観点で、戦前昭和の人たちの生きざまを考えると、例えば戦前が単純に戦争とファシズムで、戦後が平和と民主主義ではないのです。戦前にも、好き好んで戦争になったわけではなくて、平和を求めていて戦争になったり、希望を持ちながらも絶望という状況になったりもするわけです。そういう人ひとり人生の中では全部経験できないようなことが、歴史の中には凝縮されています。

編集者からも「今生きている読者が2014年に戦前昭和を読むことの意味をきちんと書いてもらわないと困る」と再三言われています。読者は、それを追体験する中で将来の手がかりが得られる……だから、研究者が歴史研究として書くというよりは、今を生きている人にとって手がかりになるようなものを書きたいと心がけています。また読みやすいように文体も心がけながら書いています。

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