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増田直紀

Profile

1976年生まれ。1998年東京大学工学部計数工学科を卒業後、同大学院に進学し、2002年に博士(工学)。東京大学准教授(大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻)。ネットワーク科学、さまざまな社会行動の数理、脳の理論を研究。 著書に『「複雑ネットワーク」とは何か』(共著、ブルーバックス)、『私たちはどうつながっているのか』(中公新書)、『なぜ3人いると噂が広まるのか』(日経プレミアシリーズ)などがある。

Book Information

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いかに伝えるかが、本を書くことの意義



東京大学工学部計数工学科を卒業後、同大学大学院に進学し、2002年に博士(工学)課程修了。日本学術振興会特別研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科講師などを経て同研究科准教授に就任。研究テーマはネットワーク科学、社会行動の数理、脳の理論。「分かりやすく書くことが基本」という増田直紀さんに、研究や執筆、電子書籍のことなどをお伺いしました。

分かりやすい言葉で


――ご専門は数理情報学ですが、現在はどのような研究をしていらっしゃいますか?


増田直紀氏: 情報理工学系研究科数理情報学専攻と言うと難しいと思われるかもしれませんが、実際の目指すところはもっとわかりやすいです。数学を何かに応用しよう、あるいは応用に必要な数学を創ろうという学問分野で、私たちは数理工学とも呼びます。数理工学とひとくちに言っても、色々な応用分野がある以上、色々な専門家がいます。その中で、私はネットワークを主に研究しています。ネットワークというと、インターネットもありますが、もう少し広く考えて、人と人はどうやってつながっているのかなどを研究しています。インフルエンザなどの感染症で言えば、どこから広まると被害が大きくなるか、感染症の拡散を止めるにはどうしたら良いかなどです。もしそういうことを予測したり制御したりできれば、社会貢献に近づけます。マーケティングで言えば、情報を広めたい場合にどういう相手に最初に訴えかければよりよく広まるか。効果的にターゲットを選びたいわけです。ネットワーク科学は、特に海外で進んでいます。

――つながりやネットワークという視点を、様々な場面に応用されているんですね。


増田直紀氏: 感染症だけでなく、金融も注目されている応用分野の一つです。例えば、ギリシャの場合のように、1つの国が破たんすると、その国にお金を貸していた国は困るので、助けようとする動機があります。すると、その国の経済も悪くなって、ドミノのように連鎖して色々な国が倒れてしまうかもしれません。もちろん、様々な要因が絡みますが、どの国がどの国とつながっているか、どの国がどの国にお金を多く出しているかといったネットワーク的な要因も、ドミノ破たんが起こる可能性を左右しうるとして最近になって注目されています。さらには、国際的なネットワークは金融だけではありません。グローバルな政治や軍事について考えるには、同盟関係や敵対関係からなる国どうしのネットワークを見て、世界がどういう国々のグループに分かれているのかを解析することができます。昔は、共産圏と西側で分かりやすかったかもしれませんが、今はもっと複雑でしょう。複雑なネットワークの中に潜んでいるグループをどのように見つけるか。そういう技術も開発されています。

――子どもの頃は、どんなお子さんでしたか?


増田直紀氏: 子どもの頃は、勉強、勉強というよりは普通に家や外で遊んだり、部活をしたりしていました。本を読むのは比較的好きな方だったと思います。ジャンルは問わず、漫画も好きでしたし、小説から啓蒙的な本まで含めてコンスタントに読んでいましたが、読書家という程でもありませんでした。ただ、『三国志』など、読んだ中で印象に残っているものはありますね。中学生の時は、赤川次郎もよく読んでました。

――ご自身で本を執筆することを考えたことはありましたか?


増田直紀氏: 昔は全くないです。私は国語がすごく苦手でした。古典や漢文はパズルみたいに考えてなんとかできましたが、現国という授業が全然分からなかったので、文章を読んだり書いたりするのは下手だと思っていました。ただ、いつからか、文章の表現でやるべきことは人に伝えることで、分かりやすい言葉で人に説明することにはこだわりがありました。だから、書くことは嫌いではありませんでした。初めて本を執筆したのは28歳のときでしたが、それよりも前からそういうこだわりは意識していました。

――専門じゃない、全く知らない人にいかに伝えるかということですね。

増田直紀氏

増田直紀氏: そうなんです。専門家って「そんな質問をするな」という雰囲気があることが多々ありますが、私はそれが大嫌いです。説明する義務があると思うし、説明は仕事の一つです。一般の方や研究分野の違う方に説明するのは、単語や文化が違うので難しい。だからこそ、分かりやすい説明ということにこだわるべきです。日本の学校教育では説明するという訓練が欠けているように見えますが、自助努力でもやるしかありません。努力や準備が足りない、あるいは無頓着が理由で下手なプレゼンテーションを聞いていると、未だに腹が立ったりします(笑)。プレゼンって、いくら準備をしても足りないです。物書きも同じで、どんなに推敲しても足りないくらいです。

――研究を通じて、ご自身の使命と感じることはありますか?


増田直紀氏: 使命感というほど切迫したものではないですが、税金を用いて研究させて頂いているので、パブリックに対して責任を果たしたり説明をしたりする義務があると思っています。論文や本を出すこともそうですし、かみ砕いて説明や講演をしてほしいという依頼があれば、なるべく受けるようにしています。授業も同じです。分かりやすい授業をすることは給料の対価として意識しています。

――学生たちとは、どのように接していらっしゃいますか?


増田直紀氏: 上下関係ができるとつまらないので、なるべく平たく接しています。特に、大学院生になると、結構1対1の付き合いになるわけです。そういうところで「先生の言うことだから」と鵜呑みにせず、違うと思ったら違うと言ってほしいし、自分はどうしたいかを出してほしいのです。日本人があまり訓練されていないスキルですが、個人の意見が出てこないと、研究としても世界で戦えないですし、就職しても結局は使われるだけになってしまいます。意見のやりとりができるコミュニケーションができると楽しいです。実際にはなかなか難しいですけどね。

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