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見田宗介

Profile

1937年東京都に生まれ。筆名、真木悠介。1956年、東京大学に入学し、1960年、同大学文学部社会学科卒業後、大学院に進学。1965年、同大学院社会学研究科博士課程を満期退学後、同大学教養学部で講師、助教授、教授を歴任し、多くの学生、研究者の指導にあたる。1998年に同大学を退官し、その後共立女子大学教授、東京大学名誉教授。 60年代から刊行されてきた多数の著作、また東大の超人気ゼミだった「見田ゼミ」を通し、現在活躍中の思想家、社会学者たちに多大な影響を与えてきた。社会科学的な分析の明晰さと詩的、直観的な対象把握や文体を結合させた独特の視点とスタイルは真木名義の著作等からも見ることができる。

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電子は、良いコンテンツを伝える手段


――電子書籍の今後の課題はどういったところにあるでしょうか?


見田宗介氏: 電子メディアで今ネックになっているのは著作権問題だと思うんです。それがきちんとされないから出版界でも心配したり、抵抗があったり、二項対立で考えたりする。ただ、音楽関係は今かなりきちっとなっていますよね。本に関しては、アメリカなんかでは動いていると思うんですけれども、日本でも、出版社も著者も納得できるルールができちゃえば、非常に楽しい共栄関係になるので、それを早く整理することが大事ですね。読者としてはそれだけ選択肢が増えるわけですからもちろんいいと思いますね。

――出版社の役割も変わっていくということでしょうか?


見田宗介氏: 出版社には2つの面があります。1つはコンテンツを作るということ、もう1つは現状では印刷メディアの特性に通じているということです。でも、コンテンツという点で言えばどちらでもいいわけです。現に主要な出版社はみんな電子メディアとか、インターネットに対応することに乗り出していますよね。それは当然のことです。つまり出版社にとって、印刷というメディア以上の生きがいはやっぱりコンテンツでしょう。文学でもいいし社会学でもいいし、あるいは歴史でもいいし、いいコンテンツを世の中に知らせるということが出版社の一番の生きがいというか使命ですから、それは必ずしも印刷にかけなくてもいいわけですね。その上で2番目の印刷メディアということの特性も、既にある出版社ならそれだけノウハウもあるし、さっき言った棲み分けがなされれば需要はずっとあると思います。だから出版社にとっての生きがいであり使命であった良いコンテンツを知らせるという点では、印刷メディアのほかに新しいメディアができたというだけの話だと思いますね。インターネットでの有利・不利というのはあると思うんですけれども、それは一時的な問題で、要するに良いコンテンツが普及すればよいと思うんですね。

見田宗介氏

――電子メディアは、映像や音声など表現の幅も広がりますね。


見田宗介氏: 音声化することのプラスが僕は非常に大きいと思います。例えば早稲田でも子どもが授業を録音して家に帰って聞いたりしていますが、そうすると大学に行かなくてもよくなったりします(笑)。将来、それをさらに電子メディアで使えば、もっと今の若い子どもに役立つものになると思うんですね。ただ、小説なんかの散文だったら電子メディアで構わないけれども、現代詩みたいなものは、行分けの微妙なところをどう表現するかとか、音声化はちょっと難しいということはあると思います。例えば読点は1秒空けるとか、句点は3秒空けるとか、改行とかは5秒空けるとか、「」(かぎかっこ)とか〈〉(やまがたかっこ)なんかでも、そういうルールが社会に定着してくれば、現代詩の分かち書きなんかでも自由に表現できると思います。そうすると今度は、詩人も微妙な表現で「、」と「。」の中間ぐらいだと2秒空けるとか、ここで言いきって10秒空けてほしいということもできる。世の中が慣れてくれば、そういった現代詩的な音声化に適さなそうな分野でも、逆にもっと自由になるとかいうこともあり得るわけだと思うんですね。短期的にはちょっとフリクショナルになるかもしれないですけれど、長期的には表現の可能性が広がるだけだと思っています。

伊豆の「隠れ家」で、現代と未来をつなぐ思索を続ける


――電子化することで蔵書がコンパクトになるという機能についてはどう思われますか?


見田宗介氏: 僕は伊豆半島の南端の方に隠れ家があって、だいたいそこで年に半分以上閉じこもって、ときどき用事があると出てくるという感じです。ボロ小屋ですけれども、周りは非常にいい場所で、そこに蔵書を半分ぐらい持ってきているんです。量はそんなに多くないけれど、いる可能性がある本を持ってきています。それを電子化すればもっと楽かもしれません。そうすると、ますます東京にいなくなるかもしれませんね(笑)。

――それぞれの立場を肯定すること、未来の展望を示して判断を委ねることなど、本日お聞きした見田さんの基本姿勢が電子書籍の見方にも現れていますね。

見田宗介氏

見田宗介氏: どちらが良いということじゃなくて選択肢、見晴らしを示すことが重要です。それからどっちへ行くかというのは人それぞれの好みもあるんです。僕自身もわがままな人間だから、人から強制されて「こうだ」と言われるのはいやだから、自由に選べる選択肢を広げるというのがいいと思うんですね。

――最後に、今後の研究、執筆に関して展望をお聞かせください。


見田宗介氏: 今、関心を持っているのは2つあるんですけれど、1つは現代社会はどこへ向かうかということ、もう1つは未来社会論なんですね。この2つはつながっている問題なんです。ちょっと乱暴な言い方をしますけれども、近代社会というのはそろそろもう終わりに近づいている。このまま行ったら資源的にいっても環境的にいっても人類はもたないので、何十年か先は破たんすると思います。そうすると、やっぱり持続可能な幸福な社会の展望が開けないとだめなわけですね。要するに、永続し得る非常に幸福な社会というもののイメージを確定しようとしています。『定本』で言うと、第1巻の名前は『現代社会の理論』になっていますが、その終わりの「現代社会はどこに向かうか」という部分で、ベースとなるものをコンパクトにまとめています。それから第7巻が『未来展望の社会学』というもので、未来の人間の見晴らしを述べたんですね。そのあたりのことをもとにして、もうちょっと具体的に展開してみたいと、この2、3年ぐらい思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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