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林望

Profile

1949年東京生まれ。慶應義塾大学卒業、同大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。専門は、日本書誌学・国文学。ケンブリッジ大学やロンドン大学の日本文献書誌を編纂。1991年 『イギリスはおいしい』で日本エッセイスト・クラブ賞。1992年 『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』で国際交流奨励賞。1993年 『林望のイギリス観察辞典』で講談社エッセイ賞を受賞。国文学・書誌学のほか、研究論文、エッセイ、小説の他、歌曲等の詩作、能評論、 自動車評論等、著書多数。

Book Information

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紙、電子を使い分ければ、歴史に残る良質の本を生み出せる



林望さんは、日本古典文学の研究者として書誌学を修め、イギリス滞在時には、『ケンブリッジ大学所蔵 和漢古書総合目録』を編さんした、いわば本のエキスパートです。その後は、表現者として仕事の幅を広げ、小説家、詩人としても活躍し、現在は長大な『源氏物語』の現代語訳に力を注いでいます。そんな林さんに本や出版への思い、電子書籍への期待などについて伺いました。

『源氏物語』の執筆が佳境で、カンヅメ状態が続く毎日。


――近況をお伺いできますか?


林望氏: 今書いている『源氏物語』の現代語訳が終わらなければ身動きが取れないようなものですね。ラジオや講演の仕事はぼつぼつやってはいるんですけども、そのほかはほとんど自宅に立てこもって執筆しているので、何も面白いことはありません。書斎に籠っているのも、いくらか飽き飽きとしてきますね。外出は1日に1回は必ず運動のために歩きに行きますが、それも毎日寸分違わぬコースを1周回ってくるだけなので、あまり楽しくはないですね。大体歩くのが夜ですから、書店もPCショップもすべて閉まっていますので。

――1日のスケジュールはどのような感じでしょうか?


林望氏: 大体起きるのはいつも朝の9時ぐらいなんですね。目を覚ますのは8時ぐらいですけど、ゴロゴロしながら少し目が覚めるのを待って、それからゆっくりと朝食を食べて10時ぐらい。その後シャワーを浴びて、身繕いをする。昼前後から書斎で仕事に入って、17時ぐらいまで勉強をして、それから夕食の支度をし、それを食べて18時半ぐらい。それからすぐまた夜の分の執筆に取りかかるときもあるし、「なでしこジャパン」が試合をやるときはそれを見ることもあります。それからアメリカに住んでいる孫たちとSkypeをする時間が必ずありますね。

――執筆は夜の部、昼の部といった形で分けられているんですか?


林望氏: 自然とそうなりますね。それは昔からそうでした。若いころは無理が利いたのでもうちょっと時間的に長かったです。朝の6時7時ぐらいまでぶっ通しで書いていたことも結構ありました。さすがにそれは長続きしなかったですね。そういうことをしてると不眠症がひどくなりますから。だからできるだけ仕事は午前2時までに終えて、ゆっくりとお風呂に入って、寝るのは3時というような感じですね。

地道な執筆作業。手を抜けば元も子もなくなる


――執筆をされる環境はどのような感じでしょうか?


林望氏: 書斎は仕事の場なので、コンピューターが何台も置いてあって、仕事が色々ですからそれぞれの資料がごちゃごちゃと山積みになっています。資料の使い方がわれわれの商売の一番大事なところなので、たくさんの資料を使いながら執筆しています。メインの源氏物語のほかに、様々な依頼原稿を書かなきゃいけない。テーマは多岐にわたりますので、料理やイギリスのことなどあれやこれやと書いています。

――同時並行で仕事をなさるときは、どのように頭の中で整理されていますか?


林望氏: スケジューリングをうまくしないといけませんね。「この日からこの日まではきちっと源氏を書く」とか、「講演の前日は準備のための勉強をしなきゃいけない」とか。能楽の解説の仕事もありますから、そうすると前の日は丸1日どういう風に解説するかという勉強をするので、本当に日々勉強勉強という感じですね。常に新しいことを勉強していないとダメです。

――源氏物語の現代語訳で、苦労されている点はどのようなことですか?


林望氏: 源氏物語は非常に難しくて、執筆に時間がかかるんです。例えば石があって、石工がそれに字を刻むとしますよね。これはどうやったって早くはできません。急いでやろうとすれば石が欠けたりして、元も子もなくなる恐れもあります。僕は源氏物語を3年間で書くつもりなんですが、このテーマを書く速さとしてはものすごい速度なんです。普通は6、7年かかるものなんです。3年で書き上げるっていうのはまさに破天荒な試みだと言われているんだけど、そういうスピードで書くと、どんなに注意していても、一文節脱けたりとか考え違いをしてしまったりということは避けられないんです。そういうことがないようにするために色々な資料を見直したり読み直したりということが必要で、時間がかかる。それとの戦いですね。

林望氏

本とは無縁だった少年時代。高校生のころから少し本を読み始めた


――先生は、小さなころから本がお好きだったのでしょうか?本との出会いや、読書遍歴などをお聞かせください。


林望氏: 僕はあんまり少年時代に読書家だったわけじゃなくて、本はほとんど読んだことなかったですね。学校の図書室なんかにはまったく足を踏み入れない少年でした。頭でっかちでメガネかけて本ばっかり読んでいる少年少女ってよくいたでしょう。ああいう子たちとは一番無縁な存在でした。小学校のころはひたすら外で遊んでいたけれど、でも世の少年たちがしている野球だとか、ドッジボールには加わりませんでした。そういうのをやるのが嫌だった。だから親しい友だちと泥んこ遊びをしたり、虫を捕まえてみたり、自然を友として、山野を歩きまわっておおかみ少年のような暮らしをしていましたね。

――本に目覚めるきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?


林望氏: 『帰らぬ日遠い昔』(講談社)という僕の自叙伝のような小説に書いてありますけど、中学校までは、ちょっと勉強すればいい成績が取れた。だから高校は戸山高校っていう当代一流の受験校に入学できたわけだけど、入ってみると、みんな本を読んでいるんです。先生も生徒が当然読んでいるものとして三島由紀夫だの太宰治だの言うじゃないですか。僕は一冊も読んでいない。それで多少焦るわけです。ほかの同級生がみんな大人に見えるっていうか偉く見える。それで、高校生のころから少し本を読み始めたんだけれど、やっぱり少年少女のころから読書をしていた子たちに比べると読むのが遅いんですよ。だから次々と名作を読んだわけではないですね。今でも翻訳書は文章が読みにくいので、ほとんど読んでいないですね。もちろん近代文学のメジャーなものはその時代に読んだけれど、そんなに自分の血肉になっているとも思えないですね。

――外国の本に関しては、原著で読まれたりもしましたか?


林望氏: いや、読んでいないんですよ。原著で読むだけの外国語の力はないし。だから例えば『戦争と平和』(トルストイ作・新潮文庫)とか、みなさんは読んでいるかもしれないけど、僕は全く1ページも読んでいないんですよ。でもそれは別に恥ずかしいことだとは思わないですね。だって『戦争と平和』と『源氏物語』とどっちが優れた作品かというと、色々な意見があると思うけど、僕は源氏のほうが優れていると思うんです。じゃあロシア人が源氏物語を読んでいるかって言ったら誰も読んでいないじゃないですか。だから読書っていうのはどれを読んだから偉いとか必読の書だとかいうのがあるわけじゃなくて、その人の人生の中でこれは読んでみたいなと思うものを必要なときに読むというのがあるべき姿だと思っているんです。だから若い人たちに「必読の書だから読め」だなんていっぺんも薦めたことはありません。好きなように好きなものを読みなさいとだけ言う。

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