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世界中の本好きのために

山形浩生

Profile

1964年東京生まれ。東京大学工学系研究科都市工学科修士課程、およびマサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務するかたわら、地域開発や政府開発援助(ODA)のコンサルタントとして活躍。科学、文化、経済、コンピュータまで、広範な分野での翻訳と執筆活動を行う。著書、訳書は多数に渡り、『クルーグマン教授の経済入門』(日経ビジネス人文庫)、『服従の心理』(河出書房新社)、など多数。近著に『邪悪な虫』、『邪悪な植物』(ともに朝日出版社)、『都市は人類最高の発明である』( エヌティティ出版)、『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』(文藝春秋)。

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電子書籍が普及するカギとは


――面白いお話だったので、ついつい話が逸れてしまいましたが、本の話に戻します。電子書籍を実際に使われてみていかがでしたか?


山形浩生氏: よい面では、やっぱり電子ペーパーみたいな物は、見た時には結構びっくりしますよね。悪い側では、やっぱりモノとしてまだ完成しているとは言い難いと思います。例えばe-Pub形式だと、「えっ、〝注〟って付けられないの?」という辺りでびっくりします(注:新しいバージョンでは対応するようになったが、未だに多くの電子本では、特に脚注の処理はきわめていい加減)。昔の本では、「〝注〟が全部なくなったら意味ないじゃん」というような本が結構あるんですよね。でもそれが平気で売っているし、なかなか返品もできない。だから、まだ買うのは怖い面がありますよね。フリーで出回っているようなものだったら、仕方ないなという話で済むんですけれども。これは商品としての欠点の一つだと思います。色々な人が言っている事ですが、「今の紙の本を真似ようとしているとダメなのかな」ということがあるけれど、「じゃあどうすればいいのか」というのは誰もわかっていないですよね。

――電子書籍のどういった部分を伸ばしていけばいいと思われますか?


山形浩生氏: 検索みたいなものをもっとうまく使えるはずだな、と思います。ぼくが電子書籍を買う場合は、自分の訳している本を買って翻訳に使うのと、もう一つは引用部分をチェックするために原著を買うというのが多いんですね。この引用部分の確認を重視する使い方だと、検索できるというのが一番有り難い。だから検索機能を今の電子書籍のあり方ともっとうまく組み合わせて使えればという気はしているんですよね。最後に索引とか付いていますけれども、索引ってあれば便利な面もある一方で、かなり限られた使い方だと思うんです。それよりは検索機能を使って、例えばこんな単語はこんな所で使われているとか、自由にリンク出来るというのがメリットだなと思うんです。

――なるほど、検索と組み合わせた新しい書籍のあり方ですね。


山形浩生氏: もともとウェブもそうですけれども、ハイパーリンクで他の情報とつながれるというのが、ウェブが最初にできたころには一つの夢としてあったわけですよね。電子書籍は今、作品ごとに一つの端末の中で完結しようという風な感じになってきていると思うんですが、大体の電子書籍もネットにつながっているし、それをもう少し活用したあり方というのがあるんじゃないかと思う。初めてハイパーテキストとかをやっていた時の、みんなの考え方というのが、もっと見直されていてもいんじゃないかと思うんです。そうすることで、もっと本のあり方が変わってくるんじゃないかなという気がするんですよね。

気軽な流し読み ―もっと適当に読書して、もっと皆にたくさん意見を言ってほしい―


――最後にお伺いします。山形さんにとっての読書とはどういうものですか?


山形浩生氏: うーん。何でしょうね。あまり僕にとっては、読書をするっていうことが、大それた事ではないんですよね。あまり身構えずにちぎっては投げ、ちぎっては投げて適当に読めばいいんじゃないかと思っている。あと、読んだ本について、みんながもう少し勝手にものを言うようになればいいんじゃないかと思うんですよね。

――あまり「読書とは」というように身構えるものではないですか?


山形浩生氏: そう思っています。本って多分、どの本を読んでも、最初から最後まで全部目新しい主張が入っているというのはあまりない。ほとんどの本は、僕は5行ぐらいで要約できると思っています。僕の書評というのは大概そうなんですけれども、「つまり君はこれが言いたいのね」という一言がわかればいい。そんなに有り難がって読まなくてもいい。一言一句、吟味しながら読んでも、そんなに得るものがないと思っているので、もっと気軽な流し読みのすすめを言っていきたいなという風には思っていますね。

――なるほど、気軽な流し読みのすすめですか。面白いですね。


山形浩生氏: 僕が一つ、いつも思っているのは、紙の本だと、ペッペッペッと流し読みがかなりできるけれども、電子書籍でなぜそれがやりにくいのかという事がまだよくわからないんです。本の厚みがあって、本の最後の方というのが分からないせいなのもしれません。適当に真ん中あたりを開く、というのがしにくいせいもあるのかもしれない。何かやりにくい。電子書籍ならではの流し読みのしやすさみたいなものが追求できれば、とたまに思う事があるんです。慣れのせいかもしれないんですけれども、色々な本の査読とかを頼まれた時に、紙で読むと要約しやすい。その違いは何なのか分からないけど、紙で読む時のように流しながら読むということが、電子書籍で仕組みとしてできると、かなりうまくいくんじゃないかなと思います。将来はコンピューターが本を解読して、自動的にまとめてくれたりすると素晴らしいなと思うんだけれども。

――コンピューターが本を要約したら画期的ですね。


山形浩生氏

山形浩生氏: だんだん意味の解析とかをし始めているので、一部はできるんじゃないかなと思うんですよね。まだ普通の本だとできないかもしれないんですけれども、例えば、色々な所が出す報告書であるとか、世界銀行の本であるとかは大体、定番の書き方があるんですね。段落があって、段落の最初の行に段落のまとめがあって、以下はそれを説明するというやり方。だから段落の最初の1行だけ読んでいけばいいですよ、という風な指導のされ方っていうのはよくしますよね。現実はそこまで完全に機械的じゃないんですけれども、もしコンピューターが自動的にまとめるとしたら、最初のうちは機械的でもいいから最初の段落の1行目だけ抽出して読ませてくれる機能というのを、電子書籍に設けてくれるといいなと思いますね。まず娯楽として読んで、面白ければ全部細かく読むというように、今の本で目次や見出しからの行き来するっていうようなことが、電子書籍でもできると便利だなとは思います。文藝春秋さんで出している訳書だと、編集部からの注文で「それぞれの各章ごとに要約を付けなさい」というのがあって、原著にはない各章の要約、ポイントが訳書に付いています。特に色々なビジネス書だとかハウツー書だと、それを出版社側で少し足せば、随分見方も違ってくるし、試し読みしやすくなりますよね。そこから他の本も少し読んでくれるんじゃないかという気はちょっとしますね。

新しいソーシャルリーディングのすすめとは



山形浩生氏: Kindleで僕が一つ面白いなとは思っているのは、読んでいると、ある箇所に「他の人がマークしています」というのを見せてくれるんですね。ある人はその箇所が大事だと思いましたという印なので、それをうまく今流行りのクラウドソーシングみたいな事をすれば、「この本で重要なのは、こことこの文とこの文とこの行ね。ここを流し読みするとこれはわかります」というまとめが出せますよね。

――それはソーシャルリーディングのようなものでしょうか?


山形浩生氏: そうですね。昔あるコンピューターを使ったアーティストが、新しいワープロソフトというのを開発していていたんです。そのソフトは、文字あるいは単語を入力する際に、次の文字を入力するまでに掛かった時間によって、フォントの大きさが変わってくるというものなんです。これで何が分かるかと言うと、「この文字や単語を入力する時に、この人は随分悩んでいる」というのがわかるんですね。「フォントが大きくなっている文字までは書き流していたけど、フォントが大きくなっている文字の辺りでは迷っているというのがわかる」というようなソフトで、ちょっと面白いなと思いましたね。

――すごいですね。それは実際に発売されたんですか?


山形浩生氏: 試作まではされたのかな。初台にあるNTTの美術館に一時展示されていたんですけどね。そういう機能を組み合わせていくと、ただのテキストじゃなくて、テキストの書かれ方とか、他の人がどう思っているのかとか、あるいはまとめとか、そんな方面で差が出てくると思うんです。全部読んでいられないけれども、他の人がどこを読んだかというのが分かるので話題についていけるとかね。それは多分、僕の読み方とも多少共通しているんです。要するに、大体わかっている所は飛ばして、「これは大事だけれども、ここはわかっていない」などという、重要な所だけ読むという事がしやすくなるんじゃないかとは思うんですよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

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